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かご形三相誘導電動機の仕組み・原理とは?特徴や始動方法までプロがわかりやすく解説

かご形三相誘導電動機の仕組み・原理とは?特徴やメンテナンスのポイントまでプロがわかりやすく解説|モーターメンテナンス.com|昭和電機株式会社

工場や大型設備で広く使われている「かご形三相誘導電動機(モーター)」。非常に頑丈で壊れにくいことから、現代の産業インフラを足元から支える重要な動力源となっています。しかし、「なぜ電気を流すだけで回るのか」「他のモーターと何が違うのか」といった基本原理や特徴を、正しく理解できている方は少ないのではないでしょうか。本記事では、かご形三相誘導電動機の仕組みやメリット、メンテナンスのポイントまでプロがわかりやすく解説します。

 

 

かご形三相誘導電動機(モーター)とは?概要と基本構造

かご形三相誘導電動機は、産業界や大型の設備で最も広く普及している電動機(モーター)の一種です。三相交流電源によって発生する回転磁界を利用して回転力を生み出す仕組みになっており、その使い勝手の良さから、ポンプ、ファン、コンベア、工作機械など、あらゆる機械の動力源として活躍しています。

なぜ「かご形」と呼ばれるのか?回転子(ローター)の構造

このモーターが「かご形」と呼ばれる理由は、その内部にある回転する部品「回転子(ローター)」の形状にあります。回転子の中心には、鉄芯(くさび形の溝がある電磁鋼板を重ねたもの)があり、その溝にアルミニウムや銅の導体棒が配置されています。そして、それらの導体棒の両端をリング状の導体(端絡環:たんらくかん)で完全に短絡(ショート)させています。

この構造を、周囲の鉄芯を取り除いて導体部分だけで見ると、まるで「鳥かご」や「ハムスターの回し車」のような形をしていることから、「かご形」という名前が付けられました。非常にシンプルで頑丈な一体型の構造であるため、回転中に部品がバラバラになるようなリスクが極めて低いのが特徴です。

回転磁界を生み出す固定子(ステーター)の役割

かご形の回転子を囲むように配置されているのが、動かない部品である「固定子(ステーター)」です。固定子は、内側に規則正しく溝(スロット)が刻まれた鉄芯と、そこに巻き付けられた「三相巻き線(コイル)」で構成されています。

この固定子コイルに、電気の位相が120度ずつずれた「三相交流」の電気を流すと、コイル自体は動かないにもかかわらず、まるで磁石がぐるぐると円を描いて回っているかのような「回転磁界」が内部に発生します。この固定子が生み出す見えない磁石の回転が、中心にあるかご形の回転子を回すための重要な鍵となります。

かご形三相誘導電動機が回転する仕組み・原理

かご形三相誘導電動機がなぜ電気を流すだけで回り出すのか、その物理的な原理は「電磁誘導」に基づいています。

アラゴの円盤と電磁誘導の法則

このモーターの回転原理を理解する上で、最も有名な実験が「アラゴの円盤」です。アルミニウムなどの磁石に付かない金属の円盤の近くで、U字型の磁石をぐるぐると回転させると、なぜか円盤も磁石を追いかけるように回り始めます。

これは、磁石が動くことで金属円盤に「渦電流」という電気が流れ、その電気と磁石の磁力によって、円盤を同じ方向に引っ張る力(電磁力・フレミングの左手の法則)が発生するためです。かご形三相誘導電動機は、このアラゴの円盤の「磁石」を電気的な変化(回転磁界)に置き換え、「円盤」をかご形の回転子に置き換えたものと言えます。

三相交流による回転磁界の発生

先述の通り、固定子のコイルに三相交流の電流を流すと、内部の磁界の向きが時間の経過とともに滑らかに変化し、あたかも磁石が回転しているような状態(回転磁界)が作られます。

この回転磁界がかご形回転子の導体棒を横切ると、電磁誘導の法則によって導体棒に大きな電流が流れます。電流が流れた導体棒は、固定子の回転磁界から力を受けるため、結果として回転子全体が磁界の回る方向へ引っ張られ、自ら勢いよく回り始めるのです。

モーターの回転速度を左右する「スリップ(滑り)」とは

誘導電動機において非常に重要な概念が「スリップ(滑り:$s$)」です。固定子が生み出す回転磁界のスピードを「同期速度」と呼びますが、中心の回転子は決してこの同期速度と同じ速度では回れません。

もし回転子が磁界と完全に同じ速度で回ってしまうと、磁界が導体棒を横切らなくなるため、電磁誘導が起きず、電流も力もゼロになってしまいます。そのため、回転子は必ず磁界のスピードよりも少しだけ遅れて回る特性があります。この「磁界の速度と実際の回転速度のズレ」の割合をスリップと呼び、負荷(モーターにかかる負担)が大きくなるほど、スリップも大きくなって回転速度がわずかに低下します。

かご形三相誘導電動機のメリット

かご形三相誘導電動機が世界の産業用モーターの主流であり続けるのには、他を圧倒する明確なメリットがあるからです。

構造がシンプルで頑丈(高い耐久性)

最大のメリットは、その構造のシンプルさにあります。もう一つの代表的な誘導電動機である「巻線形」や直流モーターのように、回転する部分に複雑なコイルを巻いたり、電気を供給するためのカーボンブラシや整流子といった接触部品を必要としません。全体が金属の塊のような堅牢な作りになっているため、激しい振動や過酷な環境下でも壊れにくく、非常に高い耐久性を誇ります。

消耗部品が少なくメンテナンスが容易

直流モーターなどでは、回転しながら電気を伝える「ブラシ」が摩耗するため、定期的な部品交換や清掃が欠かせません。しかし、かご形三相誘導電動機には、このような電気的な接触・摩耗部品が一切ありません。

定期的にメンテナンス(保守点検)が必要なのは、回転軸を支える「ベアリング(軸受)」のグリスアップや交換程度です。手がかからないため、工場の天井裏や床下、あるいは長期間連続運転を行うような、頻繁に点検ができない場所の設備にも安心して導入できます。

コストパフォーマンスに優れ、導入しやすい

構造が簡単であるということは、製造コストを低く抑えられるということでもあります。大量生産が容易なため、他の高機能なモーター(同期電動機や直流電動機など)に比べて非常に安価で購入できます。初期投資を抑えつつ、長寿命でランニングコストもかからないため、工場全体のコスト削減に大きく貢献します。

かご形三相誘導電動機のデメリットと対策

多くの長所を持つかご形三相誘導電動機ですが、物理的な構造上、いくつかの弱点も存在します。これらを理解し、適切な対策を講じることが重要です。

始動電流が大きく、トルクが小さい

かご形三相誘導電動機は、停止している状態から急に電源を投入すると、定格電流(安定して回っているときの電流)の5倍〜7倍もの非常に大きな「始動電流(突入電流)」が流れてしまいます。その一方で、動き出す瞬間の力(始動トルク)はそれほど大きくありません。

大きな始動電流が流れると、同じ電気系統につながっている他の電気機器に電圧降下(一瞬暗くなる、誤作動するなど)の影響を及ぼすリスクがあります。そのため、中大型のモーターを起動する際には、後述する様々な「始動方法」を用いて、電流を優しく抑える対策をとる必要があります。

そのままでは回転数の微調整(速度制御)が難しい

このモーターの回転速度は、供給される電気の「周波数」と、モーターの「極数(磁極の数)」によって大枠が決まってしまいます。そのため、工場の電源(50Hzまたは60Hz)に直接つないだだけでは、扇風機のように「少しだけスピードを落とす」「無段階で速度を変える」といった微調整ができません。

かつては、速度を変える必要がない一定速の用途(ポンプやファンなど)に限定して使われていましたが、現代では電気的にこの問題をクリアする技術が普及しています。

主な始動方法の種類と特徴

大きな始動電流を抑え、モーターや周囲の電気設備を保護するために、容量(大きさとパワー)に合わせていくつかの始動方法が使い分けられています。

全電圧始動(じか入れ始動)

モーターに直接、定格電圧の電源を接続して起動する最もシンプルな方法です。「じか入れ始動」とも呼ばれます。

  • 特徴: 特別な始動装置が不要で、スイッチや電磁接触器(マグネットスイッチ)だけで構成できるため、コストが最もかかりません。

  • 適用: 始動電流が周囲に与える影響が少ない、出力が数kW程度(一般的には3.7kW以下や5.5kW以下など)の比較的小型なモーターに限定して使用されます。

スターデルタ(Y-Δ)始動

中規模以上のモーター(一般的に5.5kW以上や7.5kW以上)で広く採用されている、最も代表的な減圧始動方法です。

  • 特徴: モーターの内部コイルの結線方法を、始動時には「スター結線(Y結線)」にし、回転が上がってきたら「デルタ結線(Δ結線)」へとタイマーで自動的に切り替えます。

  • メリット: スター結線で起動することにより、モーターにかかる電圧を $\frac{1}{\sqrt{3}}$ (約58%)に下げることができます。これにより、始動電流を全電圧始動時の「3分の1」にまで大幅に抑えることが可能です。ただし、同時に回る力(始動トルク)も3分の1に低下するため、重い荷物を乗せたまま起動するような用途には向きません。

リアクトル始動・コンドルファ始動

スターデルタ始動でも対応できないような、さらに大型のモーター(数十kW〜数百kW以上)や、高圧モーターで使われる始動方法です。

  • リアクトル始動: 電源とモーターの間に「リアクトル(コイル)」を直列に挟むことで電圧を下げ、電流を抑えて始動します。一定の速度になったらリアクトルをショートさせて全電圧運転に切り替えます。

  • コンドルファ始動: 単巻変圧器(オートトランス)を使い、電圧を下げて始動する方法です。切り替え時の電流のショック(過渡突入電流)が非常に少ないため、大容量の設備で電源系統への影響を極限まで減らしたい場合に採用されます。

 

インバータ制御によるかご形三相誘導電動機の弱点克服

かつては「速度制御が難しい」とされていたかご形三相誘導電動機ですが、パワーエレクトロニクス技術の発展により、近年ではその弱点が完全に克服されました。その立役者が「インバータ(VVVF:可変電圧可変周波数制御装置)」です。

周波数と電圧をコントロールするメリット

インバータは、一度交流の電気を直流に変換し、それを再び任意の「周波数」と「電圧」を持った交流に作り直してモーターに供給する装置です。

誘導電動機の回転速度は、供給する周波数に比例します。インバータを使って周波数を0Hzから徐々に上げていくことで、以下のような絶大なメリットが生まれます。

  • 理想的なソフトスタート: 動き出す瞬間の周波数を極めて低く抑えることで、大きな始動電流(突入電流)を全く発生させずに、滑らかに、かつ強いトルクでモーターを始動できます。

  • 自由自在な無段階変速: ツマミを回したり外部からの信号を送るだけで、モーターの回転数を自由に、かつ高精度にコントロールできます。

  • 圧倒的な省エネ効果: 例えば、ファンの風量やポンプの流量を調節する際、これまではモーターをフル回転させたままバルブやダンパー(弁)を絞って調整していました。これをインバータによるモーターの回転数制御に変えるだけで、無駄な電力を大幅にカットでき、大きな消費電力削減(省エネ)につながります。

現在では、かご形三相誘導電動機とインバータをセットで導入することがスタンダードとなっています。

まとめ:産業を支えるかご形三相誘導電動機

かご形三相誘導電動機は、「かご形」という極めてシンプルかつ頑丈な内部構造を持つことで、高い耐久性と優れたコストパフォーマンス、そしてメンテナンスの容易さを実現した、電動機の完成形とも言える存在です。

「始動電流が大きい」「速度制御がしにくい」というかつての弱点も、スターデルタ始動をはじめとする従来の工夫や、現代のインバータ技術の融合によって完璧にカバーされています。低コストで壊れず、インバータを使えば自由自在に省エネ運転ができるかご形三相誘導電動機は、これからも形を変えながら、世界の産業やインフラを文字通り「足元から支える重要な動力源」として活躍し続けるでしょう。

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