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【徹底比較】かご型モーターと巻線型モーターの違いとは?構造・特徴・用途をプロが分かりやすく解説

かご型モーターと巻線型モーターの違いとは?構造・特徴・用途をプロが分かりやすく解説|モーターメンテナンス.com|昭和電機株式会社

本記事では、産業用機械の心臓部である「かご型モーター」と「巻線型モーター」の違いをプロが分かりやすく解説します。両者は内部の回転子(ローター)の構造が異なり、それによって価格、メンテナンス性、始動時のパワー(トルク)に大きな差が生まれます。それぞれのメリット・デメリット、適した用途、さらに現代のインバータ技術によるトレンドまで網羅。現場に最適なモーター選定の知識が身につきます。

三相誘導モーターとは?

誘導モーターの基本的な仕組み

産業用機械や工場の設備、大型の空調システムなど、現代のインフラを支える上で欠かせないのが「三相誘導モーター(三相誘導電動機)」です。このモーターは、一般家庭で使われる単相交流ではなく、工場などで使われる三相交流電源によって動作します。

基本的な動作原理は、19世紀に発見された「アラゴの円板」の原理に基づいています。モーターの固定子(ステーター)に三相交流を流すと、内部に目に見えない「回転磁界」が発生します。この回転する磁界の中に配置された回転子(ローター)に電磁誘導が起き、回転子自体に誘導電流が流れます。この電流と回転磁界との間にフレミングの左手の法則による電磁力(電磁気的な力)が働き、回転子が磁界を追いかけるように回り出すという仕組みです。構造が比較的シンプルで扱いやすく、日本の産業界でも最も普及している電気モーターの一つです。

ローター(回転子)による2つの分類

三相誘導モーターは、どれも固定子側の仕組みは基本的に同じですが、内部で回る「回転子(ローター)」の構造によって大きく2つの種類に分類されます。それが「かご型モーター」と「巻線型(まきせんがた)モーター」です。

固定子が作る回転磁界からエネルギーを受け取るという根本的な原理は共通していますが、回転子側でどのように電流を流し、どのようにトルク(回る力)を発生させるかというアプローチが異なります。このローターの構造的な違いこそが、両者の運転特性、価格、メンテナンス性、そして用途の違いを生み出す最大の要因となります。どちらのモーターにも一長一短があるため、それぞれの内部構造と電気的な特性を正しく理解することが、最適なモーター選定の第一歩となります。

かご型モーター(かご形誘導電動機)の特徴

構造:シンプルで堅牢な「かご型回転子」

かご型モーターの最大の特徴は、その名の通り「鳥かご」に似た形状の回転子(かご型回転子)を採用している点です。鉄心の溝(スロット)に、銅やアルミニウムの太い導体棒(ローターバー)を配置し、その両端を「短絡環(エンドリング)」と呼ばれるリングで完全に溶接または一体成型してショートさせています。

この構造には、電気を外から供給するための電線や、回転体に電気を伝えるための接触部品(ブラシやスリップリング)が一切存在しません。ローター自体が金属の塊のような一体構造になっているため、内部が非常にシンプルで強固です。物理的な衝撃や遠心力にも強く、製造コストを低く抑えられるという、大量生産に適した極めて合理的な設計となっています。

メリット:メンテナンスフリーと高い耐久性

かご型モーターが世界中で最も広く使われている理由は、群を抜いた「耐久性」と「メンテナンスの手間がかからないこと(メンテナンスフリー)」にあります。

摩耗する消耗部品が、シャフトを支える「ベアリング(軸受)」くらいしかないため、定期的な部品交換の頻度が非常に少なくて済みます。また、火花(スパーク)が発生する接触部分がないため、粉塵が多い環境や、可燃性ガスが存在する化学工場などの防爆エリアでも安心して使用できるという強みがあります。さらに、構造が頑丈なため長寿命であり、本体価格や導入コスト(イニシャルコスト)が非常に安価であることも、多くの設備で標準採用される大きなメリットです。

デメリット:始動電流が大きく、トルク調整が難しい

非常に優秀なかご型モーターですが、電気的な制御の面でいくつかの弱点があります。最も大きなデメリットは、「始動電流が非常に大きく、それに対して始動トルクが比較的低い」という点です。

モーターが停止した状態から回転を始める瞬間、定格電流の5倍〜7倍もの大きな電流(突入電流)が流れてしまいます。これにより、周囲の電源系統に電圧降下を引き起こすリスクがあります。また、動き出す瞬間の力(始動トルク)があまり大きくないため、最初から重い負荷がかかっている機械を強引に立ち上げるのには向いていません。かつては、電源の周波数に同期して回転数が決まるため、モーター単体での柔軟な速度制御やトルク調整が難しいという性質もありました。

巻線型モーター(巻線形誘導電動機)の特徴

構造:外部抵抗とつながる「巻線型回転子」

巻線型モーターは、かご型とは異なり、回転子(ローター)にも固定子と同じように絶縁された「電線(巻線)」が丁寧に巻き付けられている構造をしています。

この回転子巻線の端子は、回転軸に取り付けられた「スリップリング」という導電性のリングに接続されており、そこに固定された「カーボンブラシ」を接触させることで、回転しているローターの内部回路を外部の電気回路へと引き出しています。この引き出した先に「外部抵抗器(起動抵抗器)」を接続することで、ローター内部の電気抵抗値を外側から自由に変化させることができるユニークな構造になっています。構造が複雑になる分、かご型には真似できない高度な電気的コントロールが可能になります。

メリット:高い始動トルクと柔軟な速度制御(比例推移)

巻線型モーターの最大のメリットは、「比例推移(ひれいすいい)」という現象を利用して、始動時の特性を劇的に向上させられる点です。

外部抵抗器の抵抗値を大きくして起動すると、始動電流を小さく抑えつつ、逆に始動トルクを最大クラスまで高めることができます。つまり、「電気をあまり食わないのに、最初からものすごい力で回り出す」という理想的なスタートが可能です。これにより、重い荷物を吊り下げた状態からスタートする機械でも、滑らかかつ強力に始動できます。また、運転中であっても外部抵抗の値を調整することで、インバータなどの高価な電子制御機器を使わずに、ある程度の速度制御やトルクの微調整を行えるという点が長年重宝されてきました。

デメリット:ブラシの摩耗による定期メンテナンスの必要性

巻線型モーターの構造的な弱点は、スリップリングとブラシという「機械的な接触部分」が存在することです。

金属のリングに対して炭素製のブラシを常に押し付けているため、モーターが回れば回るほどブラシは少しずつ摩耗していきます。そのため、定期的にブラシの摩耗具合を点検し、寿命が来たら交換するというメンテナンス作業が絶対に欠かせません。また、接触部分からカーボン粉(摩耗粉)が発生するため、内部の定期的な清掃も必要です。さらに、ブラシの接触不良によって火花(スパーク)が飛ぶリスクがあるため、爆発の危険性がある環境では使用できません。構造が複雑で部品点数も多いため、本体価格が非常に高く、設置スペースも大きくなる傾向があります。

かご型モーターと巻線型モーターの違いとは?一覧表で徹底比較

かご型モーターと巻線型モーターの主な違いについて、理解しやすいように項目別の比較表にまとめました。それぞれの特性を比較する際の参考にしてください。

【比較表】構造・コスト・制御性・寿命の違い

比較項目かご型モーター(籠形)巻線型モーター(巻線形)
回転子の構造シンプルな金属棒とリングの一体型(かご型)鉄心に電線を巻いた構造。スリップリング・ブラシあり
初期コスト非常に安価高価(構造が複雑なため)
メンテナンスほぼ不要(ベアリングのみ)定期的に必要(ブラシ交換、スリップリング清掃)
始動電流大きい(定格の5〜7倍)小さく抑えられる(外部抵抗で調整可能)
始動トルク小さい〜中程度非常に大きい(重負荷での起動が可能)
速度・トルク制御単体では困難(インバータが必要)外部抵抗の調整により可能(比例推移)
火花の発生なし(防爆環境に対応可能)あり(ブラシの接触によるスパークのリスク)
製品の寿命・耐久性非常に高く、頑丈摺動部(こすれる部分)の管理が必要

このように、かご型は「安くて頑丈だが、スタート時の制御が苦手」、巻線型は「高価で手がかかるが、スタート時の力が強く制御しやすい」という対照的な関係にあります。

かご型モーターと巻線型モーターの使い分け

かご型モーターが最適なケース(ファン、ポンプ、一般的な産業機械)

かご型モーターは、その高い信頼性と経済性から、産業界の標準機として幅広いシチュエーションで選ばれています。

特に最適なのは、「スタート時にそれほど大きな力を必要とせず、一度動き出したら一定の速度で長時間回り続ける」という用途です。具体的な例としては、工場の送風機(ファン)や排風機、液体を送り出す各種ポンプ、空気圧縮機(コンプレッサー)、一般的なベルトコンベアなどが挙げられます。また、メンテナンスのために頻繁に機械を止めることができない連続操業のラインや、設置場所が狭く点検が困難な場所、粉塵が舞うような過酷な環境下では、かご型モーターの一択となるケースがほとんどです。

巻線型モーターが最適なケース(クレーン、エレベーター、大型粉砕機)

巻線型モーターは、かご型では対応が難しい「超重負荷」がかかる特殊な大型機械や、緻密なトルク制御が求められる現場で選ばれています。

代表的な用途は、重い資材を吊り上げた状態から静かに、かつ力強く巻き上げを開始しなければならない「天井クレーン」や「デリック」、鉱石や廃材を強力な力で噛み砕く「大型粉砕機(クラッシャー)」、大型の「エレベーター」や「索道(ロープウェイ)」などです。これらの設備では、始動時に大きなトルクが必要とされるだけでなく、急激に大きな電流が流れて周囲の電源をパンクさせるわけにはいかないため、巻線型モーターが持つ「低始動電流・高始動トルク」という特性が現場の安全と安定稼働に不可欠となります。

【補足】現代のインバータ技術とかご型モーターの普及

モーターの選定を考える上で、近年の「パワーエレクトロニクス(インバータ技術)の進歩」という歴史的背景を知っておくことは非常に重要です。

かつては、速度制御や高い始動トルクが必要な場所には巻線型モーターを使うしか選択肢がありませんでした。しかし現代では、「インバータ(周波数変換装置)」を使ってかご型モーターに流す電気の周波数や電圧を自由に変えられるようになりました。インバータを使えば、かご型モーターであっても始動電流を低く抑え、かつ強力なトルクを発生させながら自由に変速運転ができます。そのため、現在では「インバータ+かご型モーター」の組み合わせが主流となり、メンテナンスの手間がかかる巻線型モーターは、超大型の特殊設備などを除いて、徐々にかご型へとリプレイス(置き換え)が進んでいます。

まとめ:特性を理解して最適なモーターを選定

三相誘導モーターの二大巨頭である「かご型」と「巻線型」は、回転子の内部構造の違いによって、それぞれ全く異なるキャラクターを持っています。

  • かご型モーターは、構造がシンプルで壊れにくく、コストパフォーマンスとメンテナンス性に優れた「現代の産業界のスタンダード」です。

  • 巻線型モーターは、ブラシのメンテやコスト面でのデメリットはあるものの、重負荷をものともしない圧倒的な始動トルクと制御性を持つ「大型・特殊用途のスペシャリスト」です。

現代の設備設計においては、インバータ制御の普及によってかご型が選ばれるケースが大半を占めるようになりましたが、既存設備の維持管理や、超大型機械の設計など、巻線型ならではの特性が求められる場面も依然として存在します。それぞれのメリット・デメリットを正しく天秤にかけ、負荷の大きさ、予算、メンテナンス体制、周囲の環境を総合的に考慮して、最適なモーターを選定してください。

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